さよならピアノ
「ねぇ、どこに行くの?」
「ごめんね
もうここには住めないの」
ピンポ〜ン
「毎度!
ピアノ買取センターです!」
「ねぇ!おかあさん!
ぼくのピアノ、無くなっちゃうの?」
「ごめんね、ごめんね」
「やだやだやだ!
ぼくピアノ大好きなんだよ!
やだやだやだ!」
「お願いだからワガママ言わないで。
お願いだから」
「やだやだやだ!
エ〜ン、エ〜ン」
「ぼうや
今は分からんかもしれんけど
お母さんもツライんや
これ以上お母さんを困らせたら
アカンで」
「だけど。。。」
「坊やが大きくなったらいっぱい働いて、自分でピアノ買ったらええんや。」
「・・・うん」
「ええ子やな。
よっしゃ、ほな最後に
坊やが好きな曲をひいてくれるか?
それでピアノとお別れしよう」
「うん」
子供は
大好きな曲「キラキラ星」
を弾いた
ピアノの音色を聞きながら
瞳から涙がキラキラこぼれた
「ぼうや
ピアノごっつう上手やったな。
がんばれよ
強い男になって
お母さんを守ってあげや」
「うん!
ありがとう、おじさん!」
男は
ピアノを買取り
立ち去った
子供は手を振り
見送った
男は買取センターの事務所で
つぶやいた