嘘はついてもいい、愛する人を守るためならば
息子はまっすぐな瞳で
私に向かって言った
「会いたい」
私は何も言わず
うなずいた
意中の人に息子を会わせるために
テキパキ炊事掃除洗濯を終わらせた
場所取りも成功し
前から二番目だ
息子は私の手をぎゅっと握る
緊張が伝わってくる
音楽と共に車のエンジン音が鳴り響く
意中の人が
予想以上に至近距離に近づき
それでも落ち着きを取り戻し
意中の人を見つめる
しばらくして
息子がつぶやく
「なんだかさぁ、
仮面ライダードライブって
うごくのがおそいよね?」
いかに返答すべきか
一瞬迷った
愛する息子の夢を壊さぬよう
いかに納得させるか
「仮面ライダードライブの動きが遅くなっているのは悪者の仕業なんや」
「えっ!そうなの?」
「そうやで!
この会場中が悪者の仕業で
み〜んな動きを止められてるんや。
ほらっ!
仮面ライダードライブがやられてる!
大きな声で応援してあげて!」
「がんばれーー!!!
仮面ライダードライブー!!
まけるなーー!!!
仮面ライダードライブー!!」
そのとき
一人の少年が
颯爽と舞台の前を走って行った
「あの子
仮面ライダーよりはやいね。。。」
息子の夢が
少し壊れた。。。